2006/12/30

灰溶融炉問題で思うこと:一人の富士見町の町民の声 (kaisetsu)

富士見町に住むカラマツさん(HN)が灰溶融炉問題について書いた文章を紹介したいと思います。カラマツさんは、研究者としての10年間を含め、民間の大手企業で生産技術に長年携わった方です。技術の専門家であるだけに、カラマツさんの言葉には無視できない説得力があると思います。組合の方も、真剣に住民の安全を考えているなら、ぜひ一読して噛み締めていただきたいです。

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 「灰溶融炉」 そんな聞き慣れない名を知ったのは、1年ほど前、住民達が作成した1枚のチラシでした。その導入は私の住む八ヶ岳山麓の3市町村(茅野市、富士見町、原村)において、多くの住民に知らされないまま、4年ほど前から検討されていました。導入地の生活環境影響調査に4,200万円ほどの調査費を使い、非公開の委員会によって導入機種を決める入札寸前の状況でした。その情報を知った住民達が、具体化している計画の存在を町民に知らせるチラシだったのです。その後住民達が、1回目説明会の質疑応答の録音テープから起こした、58ページに及ぶ資料を読んで、これは無関心ではいけないと感じました。
 早速インターネットで検索して調べてみました。それによると、焼却した灰や埋立地から掘り起こした灰を、1,200℃以上の高温で燃やし、出来た溶融スラグを埋め戻しや路盤材等として再利用する、高温焼却炉でした。鉄鋼メーカーが開発して以来あまり導入されていなかったのですが、1997年、国のゴミ広域処理化通達で補助金が出るようになったことから、埋め立て処分場の延命に困っていた多くの自治体が飛びついた経緯があるようです。しかし検索を進めていくと、幾つもの問題を抱える設備ということがわかりました。

 導入自治体から公開された情報では、頻繁に起きるトラブル、焼却炉に比べて3倍近い処理コスト、用途の見つからない溶融スラグ等の事例が紹介されていました。そして肝心の焼却灰の減量効果は、処理に先立つ溶融不適物の除去、溶融スラグの他に発生する溶融飛灰、溶融メタル等によって、十数%程度しか期待出来ないとわかりました。疑問や不安を感じた住民達が、灰溶融炉問題に詳しい大学講師や弁護士を招いて開いた勉強会に参加してみました。驚いたことは、安全、安心に対する国の規制や基準が不十分のまま実用化されているという事実でした。たとえば有毒物質のダイオキシンについては、常時発生しているにもかかわらず、 「年1回、燃焼が安定した1時間以上経過後、連続4時間以上計測した濃度が基準値以下」 という排出基準になっています。またダイオキシン以上に毒性が強く、より高濃度で排出されているダイオキシン類似性毒性物質や、フィルターでは除去出来ない鉛、水銀、カドミウム等の有害重金属ガスについては、排出基準が全くないということでした。

 以後3回の灰溶融炉説明会に参加していますが、住民側の意見とは平行線のままで一向に溝が埋まりません。一番問題な安全性について、自費で専門家を招き勉強している住民側に対して、行政側は国の基準に沿って進めていると云うだけです。かってJIS規格を決める委員会に使用者側委員として参加した経験では、そこで決まるJIS規格などというものは、多くのメーカーがパス出来る低い基準値でした。使用者はJIS規格などあっても、自社に導入する際は独自の厳しい評価試験を実施して、いちばんコストや品質が良くて安心安全なものを選びます。水俣病や薬害エイズ裁判でも明らかなように、国の云うことは絶対に安心、安全ではありませんでした。
 
 ゴミ問題は 「循環型社会」 実現のためだけではなく、歳出削減への効果もあります。住民1人1日当たり家庭系(可燃+不燃)ゴミ量は、最近のデータによれば、鎌倉市412g、東京日野市465g、横浜市483g、2020年迄にゴミゼロを宣言した徳島県上勝町では何と106gでした。それに比べここ3市町村は649g、まだまだ減らせる余地があります。
 町に灰溶融炉が導入されれば、償却費用も含めると3市町村合計で年間5億円ほどの費用がかかります。富士見町は既に233億円ほどの借金を抱えていますが、導入によって町の借金は減るどころか確実に増えていくことになります。最近のニュースで、今後5年間で61億円の財政赤字を公開した「熱海市財政危機宣言」を知りました。また財政破綻した夕張市で、血相変えた住民達が責任を追及していたニュースを見ましたが、熱海市が早めに住民の危機意識と自覚を促したのは、賢明だと思いました。

 この地で、このような反対運動が起きるとは思いもよりませんでした。その多くは、この地が気に入って他所から移り住んだ人達です。お金を出し合って先生を呼んだり、街頭でのビラ配りや各戸への配付、地道な説明活動や建設反対の立て看板設置など、何とかしたいという思いは純粋そのものです。また、説明会で聞いた、建設予定地域に長く暮している地元住民の発言も忘れられません。国の基準で作られ国の政策で2006年2月に撤去された、焼却炉が稼動していた間、雨水貯水槽にボウフラは一匹も発生しなかったと。灰溶融炉は、焼却炉よりもはるかに危険と考えられるものです。

 ある政党の住民アンケートでは、延期または中止を求める意見は約75%と多数でしたが、回収は10%に満たない数でした。そんな折り行政側は、関連4地域の区長に突然、公害防止協定の調印を申し入れて来ました。

 十分な安全の確認や保障がなされないまま、補助金を交付する国に怒りを覚えますが、行政は、それを知った時点で止めるのが正しい判断だと考えます。国やメーカーの言い分とデータを信用するのみで、行政自らが安全、安心を検証して住民に説明したことはありませんでした。町にも住民にとっても、何の利点もない灰溶融炉設備などを導入することなく、先ずは何よりも、総ての住民が行政と一丸なって、ゴミの削減を実施すべきではないかと思っています。

(2006年12月)

住民の安全に対する配慮はやはりゼロ:3回目の公開質問状の回答 (katsudo)

八ヶ岳周辺のごみ問題を考えるネットワークは12月の上旬に組合に3回目の公開質問状を提出しました。その回答をこの間いただきましたので、掲載します。
画像をクリックすると、pdfファイルが表示される。



4つの質問のうち、1つはコスト、残り3つは(1)予定地の地質、(2)排気ガスの基準値、そして(3)スラグに含まれている重金属の溶出と言う安全性についての質問でしたが、そのいずれの回答を見ると、組合がいかに住民の安全を真剣に考えていない事がよく分かります。(つづく)


地質に関して、予定地が活断層を含めた断層地帯である可能性が高いのに、組合は詳しい地質調査を行っていないし、回答では「通常の建築物よりも郷土のある設計をいたしますので、厳談かでは、ご質問をいただきました調査に付きまして、実施しなければならないと判断するに至っておりません」としている。組合自らの生活環境影響調査では、休戸の予定地周辺は「脆弱」で「災害を起こしやすい」。いくら耐震設計を行っても、その地盤が脆弱だったり活断層の真上だったりしたら、大地震が起こった時、耐えられるかは非常に疑問です。調査をした場合、予定地がこう言う施設を建設するのに不適地だと言う結論になるから調査しないと言う事が目に見えています。

排気ガスの基準値について、今までの回答が私たちの疑問に答えていないからこそ繰り返し聞いているのに、組合は頑としてそれらの疑問に耳を傾けてくれません。組合の自主基準や国の基準には重金属やダイオキシン類似物が入っていないことに対して、組合は何一つ答えていません。

スラグにしても、JIS規格は酸性雨の影響を完全に無視した、大変非現実的なものです。仲間には利用者側からJIS規格設定に参加した方がおり、その方は「そこで決まるJIS規格などというものは、多くのメーカーがパス出来る低い基準値でした。。。水俣病や害エイズ裁判でも明らかなように、国の云うことは絶対に安心、安全ではありませんでした」とここで書いています。現に組合が販売するスラグから鉛などの重金属が溶出して土壌汚染、地下水汚染を起こす可能性があるのに、ここでも国の基準を盾にこう言う疑問に答えようとしません。
総じて言うと、今回の質問の回答ではっきりしているのは、組合は「安全第一」を掲げながら、安全とはとても思えない基準の後ろに隠れ、言っている事と、実際にやっている事は全く違います。口先だけの「安全」では、安全は全く保障されません。たとえばダイオキシン類測定のための長期連続採取システムの導入など、住民側に立った安全対策を約束しない限り、いくら「安全第一」を叫んでも信頼を得る事は無理でしょう。住民がぶつける疑問に真剣に答えているかどうか、これが組合の誠意を示す尺度ではないでしょうか?

2006/12/29

12月23日のデモ (katsudo)

12月23日のデモは、地元の警察のご協力もあって(ありがとうございました!)、天気にも恵まれ、無事に行うことができました。組合が12月24日に予定していた公害防止協定の調印式は不人気のためにすでにキャンセルとなっていましたが、それでも多くの親子を含め、70人ほどの住民が集まり、鳴り物を先頭に、灰溶融炉建設がいかに問題が多いかをアピールできたと思います。こうしたデモは富士見町では初めてらしい。

写真を少し載せます:
画像をクリックすると拡大表示されます。












2006/12/22

灰溶融炉の建設と、公害防止協定を無理やり迫る組合に抗議するためデモを行います。

実施日:12月23日(土)
時間:午後1:00~
集合場所:富士見町役場駐車場

参加自由、子供さんの参加も歓迎します。
プラカードを用意できる方はお持ちください。
町内を約1時間ほど歩きます。

たくさんの方の参加をお待ちしています。(^^)

常識の勝利:調印式延期のお知らせ

諏訪南行政事務組合が設定した12月24日の公害防止協定の調印式は延期されたようです。
組合は年末の区長や区役員の忙しさを延期の理由としているようですが、それ以外にも落合地区を中心に各区から次のような反対意見が出たようです:
  • 住民説明会も終了していないのに調印はできない。
  • 協定を急ぐ必要はない。
  • 協議もしないで協定は結べない。
どれを取ってもごくごく当たり前なことで、調印式の延期は区長たちが示した常識の勝利だと言えます。

組合がこう言った事情を無視し、無理やり24日に調印を迫ったのは、時間が経てば経つほど自分たちにとって都合の悪い情報が出てくるからに違いないです。たとえば私たちが発行したチラシも協定を結ぼうとしている関係区に配布されたので、大体すべての区民は公害防止協定の中身(その無意味さ)に気付いているはずです。今回、組合が取った姿勢から判断して、本当に住民の安全を考えているのか疑問に思えます。私たちは、このような組合を信用していて良いのでしょうか?

なお、24日の調印式が流れたとしても、組合はおそらく同じ具体性の無い協定書を、今度は1月中に締結させようとすると思われます。改めて強調したいのは:
  • 締結を急ぐ必要は全くありません。
  • 住民の安全を守るための協定のはずです。住民が主役で、組合が提示した協定書を鵜呑みする必要は全くありません。組合が提示した協定書は締結しても、住民の安全は絶対に守られません。
  • 住民は自らの安全を守るための厳しい条件をどんどん提示すべきです。それがどう受け止められるかは、組合の誠意を計る尺度になります。
  • 細部がすべて提示されて、初めて検討に値する協定になります。
  • 機種が決まってからでなければ細部については協議できません。
  • 専門家を交えて細かく協議しないと、効力のある協定はできません。

私たちは、公害を防止し、住民の安全を守るためには、公害防止協定を結ぶより、建設を止めた方が確実で楽だと思っています。

2006/12/20

公害防止協定と、なんと12月24日にも調印式!


 組合は12月12日付で「公害防止協定書」を、各関係区の区長に送り、そして驚いた事に、12月24日にも、調印式を設定し、強引に「区長公印」持参での区長たちの出席を要求しました。その案内の中、「先般よりご協議をさせていただいております『諏訪南灰溶融施設に係る公害防止協定』の締結につきまして」と書いてあるが、区長たちのお話では、協定の内容について、具体的な協議は何もしていません。
 どういう訳か、調印式開催の案内も区によって二通りがあって、それだけでも腑に落ちないが、協定を見たら、何だこりゃ、と言わずにはいられませんでした。なにしろ、中身が何もないです。A4が2枚半で、「具体的な施設計画及び運転管理等の計画」はすべて後回しにしています。こう言った細部が一番肝心で、これが提示されて始めて検討に値する協定になる。細部が明記されていない協定に調印する事は極めて危険です。協議もせずに具体性の無い協定を突きつけて「調印しろ」とはトンでもない非常識です。関係区の住民が、提示された協定書の中身の無さ、欠点の多さに気付く前に急いで調印させて、「地元住民の理解を得た」として一気に実行に移る事が組合の狙いと思われるが、住民を完全にバカにしています。区長たちが組合のこのような非常識に対して、常識を示して印を押さないことをひたすら祈っています。
 私たちは手に入った協定をゴミ弁連会長の梶山正三弁護士に送り、意見を伺いました。すると、やはり、梶山先生も「総じて、案が簡単すぎて、大切なことはすべて『細目協定』に委任されている。これは一種の『白紙委任』で、協定案としての体をなしていない」と言う感想をいただきました。「白紙委任」とは「条件をつけずに、すべてを任せること」と言う意味です。要するに一旦この協定書を締結すれば、あとは組合がたとえ地元委員会の形で住民の意見を聴くとしても、基本的に好きにできる。
 梶山先生は各々の条項に対してもその欠点を指摘しています。先生の意見をそっくりそのまま、協定書と調印式案内とともにチラシにまとめ、19日から関係区の住民に配り始めました。ここでもそのチラシを公開します:
http://fujimi.mond.jp/files/kyoteian_chirashi5.pdf
協定書はファックスからスキャンしたもので、細かくチェックしたつもりですが、誤字を見つけたら教えてください。
チラシにも上記にも似たような事を書いていますが、私たちの意見は次の通り:
  • 協定を急ぐ必要性は全くありません。
  • 調印は住民説明会が終了してからにすべきです。
  • 機種が決まっていないのに協定の話を進める組合は非常識です。
  • 協議もせずに大切な細部も提示せずに一方的に協定書を押し付けてくる組合は信用できません。
  • 公害を防止し、住民の安全を守るためには、協定を結ぶよりも建設を止めた方が確実で楽です。

2006/12/14

原村の清水村長の認識

諏訪南行政事務組合の矢崎組合長(茅野市長)や矢嶋副組合長(富士見町長)はどんな疑問をぶつけても、(1)施設が100%安全で、(2)計画に全く問題がなく、(3)反対する理由は全然分からないと言う認識のようだが、少なくとも清水副組合長(原村長)はしっかりした予備知識とあらゆる意見に耳を傾ける姿勢に基づいて、この計画を客観的に見て、問題点も十分に把握しているようだ。原村の2006年12月に載った村長自筆のコラムの内容を紹介します。

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清水村長のほっとコラム Vol.11 (広報はら Vol.331 2006年12月)

 諏訪南行政事務組合の焼却灰の熔融施設を建設するにつき、住民の方々のご理解をいただくための説明会が大変難行しています。このままでは建設も危ぶまれる勢いです。
 そもそも灰熔融とはどういうものかですが、灰を高温で焼成することによって、これが溶けてガラス質の固体となり、体積が1/3以下となります。この物質を溶融スラグと呼びますが、JIS規格によって品質が管理され、コンクリート骨材や路盤材として利用が可能となります。溶融には2つの方法があり、焼却後に出た灰を1300℃住に熱して行う方法と、焼却ゴミを高温化してガスを発生させ、残りを更に熱し続けることによって溶かす、ガス化溶融という方法があります。ガス化溶融は焼却物の熱を利用できますが、灰を熱する方法は外部熱源に頼ります。いずれも大変な高温を作り出さなければならず、限界点の技術を使うことになります。現在ガス化溶融でなく、灰から溶融固化する方法は把握しているところで、全国に135施設あります。諏訪南は灰溶融固化方式です。
 ところで一旦灰にしたものを更に大変な費用をかけて、何故溶融しなければならないかということですが、①灰を捨てる処分地が満杯となり新たな処分地が望めないこと、②灰を埋めても浸出水などの無害化を行なわなければならず環境への負荷が続くこと、③スラグ化することにより有害物質を殆ど封じ込めると共に再利用により循環型社会に寄与できること、などです。
 では何故反対が起きるのでしょうか。①高温焼成により重金属等がガス化拡散する。②スラグが利用されない。③JIS規格は信用できない。④建設にも運転にも莫大な費用を要す。⑤全国の施設にトラブルが多い。⑥ゴミ減量が先だ。⑦建設場所(富士見町休戸)は断層地帯。⑧同じく水源地帯。他にも多数の反対理由があります。
 環境意識の高いことは望ましく、喜ばしいことです。しかしゴミ処理は止めることの出来ない行政事務です。諏訪南行政事務組合は、問題解決のため最大限の努力が求められます。

原村長 清水 澄

2006/12/12

看板でアピール (katsudo)


地元住民の本心を伝える看板を休戸で12月10日に建てた。

八ヶ岳周辺のごみ問題を考えるネットワークの有志で、12月3日に5枚の看板を休戸、若宮、富里、小手沢、と南原山の有志の土地に建てた。そして12月10日にもう1枚、休戸でやはり計画に反対している住民の土地に建てた。休戸区は3軒しかないが、予定地の地元中の地元で、私たちが知っている限り、富士見町の町議で、休戸区の区長でもある日本共産党の富士見町委員会の大橋利彦委員長を含め、現時点で灰溶融炉建設に賛成の区民はいません。


上と下の画像は若宮で建てた「両面」看板です。


(下)背景に真澄の醸造所が見える休戸のもう一つの看板





2006/12/10

ちょっと待てやい!その公害防止協定で本当に大丈夫?(shiryo)

ゴミ弁連会長の梶山正三弁護士の話に基づいて、「協定を検討に当たってこれだけ気をつけましょう」と言う内容でビラーを作り、当該集落に配っています。またそれぞれの区長にも、梶山先生が11月18日に富士見で行った講演のDVDも渡してあります。

画像をクリックすると、PDFファイルが開く。


ここにもビラーの内容を載せます:
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ちょっと待てやい!その公害防止協定で本当に大丈夫?

私たち「八ヶ岳周辺のごみ問題を考えるネットワーク」は富士見町休戸で計画中の灰溶融施設が多くの危険と無駄をもたらし、灰の減量効果も薄く、成果物であるスラグも環境を汚染する恐れがあるという事から、できたら施設を作らない方がよいと思っています。どんなに強力な公害防止協定を結んでも、安全性が保障される可能性は、ほとんどありません。しかし公害防止協定さえ結べば安心だと考えている方のために、これだけ気をつけないと、協定を結んでも全く役に立たないと言う注意点をここにまとめて見ました。この内容は11月18日に富士見町で講演を行った梶山正三弁護士のお話に基づいたものです。梶山先生は「たたかう住民とともにゴミ問題の解決をめざす100人の弁護士の連絡会』(通称「ゴミ弁連」)の会長であり、理学博士でもある。廃棄物処理をめぐる訴訟を数多く手がけてきた、公害防止協定についての第一人者です。 (つづく)
これだけ気を付けて見て下さい:
• 協定当事者は誰?
協定当事者は「町」や「区」ではなく、住民自身でないと、協定違反の事実に対して住民は何もできない。「住民と事業者だけで結ぶのが本則だ」(梶山弁護士)
• 組合は住民の立入調査権に条件を付けている?
「担当者と一緒」や「事業者の業務に差し支えないように」、「事業者が認める者」などの条件が付くと、事業者にとって都合の悪い人は立ち入りできない。立入調査権に条件が付くと、効力を失う。
• 協定違反事実の認定方法は明記されている?
「例えば風速5メートル以上の風が10分以上続いた時には、その日は搬入を停止すると、(東京日の出町の協定に)こう書いてあります。それで台風が何回来ても、彼らは風速5メートルを超えてないと言い張るんですね。そこで水掛論になっちゃって、違反しているのかどうかという入り口でつまづいてしまう。事業者と住民の意見が一致しない場合に備え、(それぞれの項目)の認定方法を入れなければならない。あるいは仲裁規定と言うが、認定できる第3者機関を必ず作る。第3者機関の認定には必ず従う、という事を入れなければならない」(梶山弁護士)
• 協定違反判断の基準は「基準値」となっていますか?
重金属やダイオキシン類似物質など、ほとんどの有害物質について基準値がないので基準値を守っていても意味がない。また現行のダイオキシン測定法は極めて不十分で、基準値を守るのにいくらでも操作できる。そう言う意味で、協定違反判断の基準を「基準値」に求めないことが大事だ。
• 違反に対する措置には強制力はある?
2002年3月に福井県敦賀市の産業廃棄物処理場の公害が発生した際に、住民は「廃棄物の撤去」と「損害賠償」を敦賀市長に求めましたが、市長の答えは「公害防止協定は、紳士協定であり、法的強制力はない」。公害防止協定は紳士協定(=相手を信用してする口約束)であっては意味がない。後で裁判所に行っても、紳士協定だとは言われないように、「協定を作った時に違反事実を第三者機関に認定させて、それに対して強制執行認諾という条項を入れる」(梶山弁護士)
• どう言う報告義務、データ開示義務になっていますか?
「水質・大気等の検査報告では役に立たない。大気と言うのはその日の気象条件によって違う。大気はそのときの気象条件、風向き、煙の上がり方で常に変動する。月に一度測ってそのときよかったでは話にならない。単純に測った結果を報告させても意味がない。」(梶山弁護士)
• 業務日誌備置と随時閲覧は明記されている?
「業務日誌を備えおいていつでも誰でも見れるようにする。これも絶対に必要だ」(梶山弁護士)
• 定期協議、随時協議の規定は入っている?
定期協議、随時協議の規定を入れる。業者と少なくとも二週間に一度、顔をつき合わせて管理運営の方法、住民の被害を少なくても2時間ぐらいは話し合いの機会を設ける。随時協議とは必要に応じてどちらかが求めた場合、もう一方は必ずそれに応じなければならない。(梶山弁護士)
• 協定締結前に必ず専門家のチェックを
協定を作って後で泣くのは、法律家に見てもらっていないため、協定に実効性がないからだ。「実効性があるだけの案を持っていくと、相手が嫌がります。
相手が嫌がるくらいものもではないと意味がない」(梶山弁護者)

これも条件としましょう:
• ダイオキシン測定のための長期連続採取システム*
組合は施設の排気ガスについて「国よりも大変厳しい自主基準」を設定したとしながらも、排出される危険性が大である重金属類や、ダイオキシンよりも毒性が強いダイオキシン類似物質は基準に含めていない。肝心のダイオキシン測定法に関しても、「国の基準に従って実施する予定です」と言う。国の定める方法だと、(1)届出はわずかに年1回だけ、(2)測定は燃焼が安定した1時間以上経ってから4時間以上測定すれば足りる、(3)最も低い値を届け出ればよい。この基準だと、事業者が測定業者を選定して委託するので低い値が出るまで何度も測る危険もあり、検査用の灰を溶かすことによって低い数値を出すことも可能となる、などの重大な問題があり、誰が見ても不十分だ。
ところが、ガスを最長1ヶ月の間に連続的に採取し、その平均値を年十数回割り出す技術が確立されており、ベルギーやドイツでは採用が義務化されている。日本でもすでに4台が導入されている。組合は国の現行法より遥かに精度も高く、結果をごまかしにくいこの長期連続採取システムの導入を、住民から言われなくても検討するはずだが、説明会で問いただしたところ、その存在すら知らなかった。
長期連続採取システムは導入コストは安くないが、灰溶融炉の耐用年数で割れば、大したお金ではありません。人の命に値を付ける事はできないし、「高くて導入できない」ということは絶対にありません。
地元住民の安全と安心を本気に考えているなら、公害防止協定に長期連続採取システムの導入を条件とした場合、それを受け入れるはずです。逆に受け入れない場合、信頼できる相手ではないということがはっきりする。

* 例えば「アメサ」。国内代理店のHP: http://www.greenblue.co.jp/services/ex_amesa_01.html
資料をご覧になりたい方は連絡ください。


• スラグの最終利用の詳しい記録と、汚染に対する損害賠償責任の明記
灰溶融施設の「成果物」であるスラグも多くの危険性を含んでいる。灰を溶融することでできるガラス状のスラグは、道路工事の路盤材や埋め戻し材などに使い、「リサイクル時代」に貢献すると言う。これこそが灰溶融施設の存在理由だが、下手するとアスベストの二の舞になりかねない。なぜならスラグは鉛やヒ素など、多くの有毒な重金属を含んでおり、それが日本各地に現在も降っている酸性雨によって溶出する可能性が大いにあるからだ。今年の7月にはJIS規格も決まり安全だと言うが、その規格は酸性雨を全く考慮していない。広島県保健環境センターが行った実験では、酸性雨の条件下では多くの鉛が溶出している。中国の経済発展で、西からの大気汚染が増し、日本に降り注ぐ雨はどんどん酸性になっていくはずだ。公共工事などで地域中にばら撒かれたスラグによる土壌汚染、地下水汚染は地域住民の健康を蝕み、財産である土地をも台無しにする可能性がある。しかし、ここでも組合は住民より事業者の都合が優先され、本質的な汚染防止策とは程遠いまやかしの基準を盾に公共工事でのスラグ利用をもくろんでいる。
そこで、住民として公害防止協定の条件として求めるべきものは基本的に二つあります:
(1)万一のスラグによる土壌汚染・地下水汚染に備え、組合が生産したスラグが最終的にいつ、どこで、どれだけの量、どういう風に使われたかと言った記録を取ること。
(2)万一のスラグによる土壌汚染・地下水汚染が確認された時、汚染除去と被害を受けた住民に対する損害賠償の責任を明記すること。

これだけ覚えておきましょう:
• 協定を結んで施設を作らせるより、建設を反対して作らせない事が一番安心。
そもそも不要で危ない施設です。地元の住民が結束して建設を反対すれば、絶対に止めることはできる。
• 信頼できない相手は必ず協定破りをする。
この計画は、平成14年ごろから検討が行われていたにも関わらず、私たち住民に計画の説明がなされたのは、今年の5月、6月で、工事着工が予定されていた平成18年8月のほんの数ヶ月前だった。組合から出された資料も都合の良いものばっかりで、公開質問状に対する回答は極めて不十分だ。予定地も「第一候補地」と位置付けながら、「第二」「第三」はなく、最初から休戸で作ることが決まっていた。こんな組合を、公害防止協定を結ぶ相手として信頼できるか、よくよく考えてください。
• 協定締結前に必ず専門家(法律家)のチェックを。
それも、組合お奨めの弁護士ではなく、ゴミ弁連に相談しましょう。
TEL: 0246-24-2340 HP: http://gomibenren.jp/

* 組合の案は何枚?「実際に私が頼まれて作ったものはかなり膨大。A4で40ページほどになる」(梶山弁護士)

組合が嫌がるぐらいの内容でないと、協定を結ぶ意味がない
「八ヶ岳周辺のごみ問題を考えるネットワーク」発行 TEL: 0266-79-6977 小林峰一 http://yoyuro.blogspot.com/

2006/12/09

焼却溶融施設計画に疑問:長野日報への投稿掲載



メンバーである富士見町境地区のジェルミ・エンジェルさんが長野日報に送った投稿は今日の新聞に掲載された。本人の了承を得て、原文をここに載せます。

焼却溶融施設計画に疑問
 茅野、富士見、原の三市町村でつくる諏訪南行政事務組合が富士見町の休戸を予定地として進めている焼却灰溶融施設の建設計画に多くの疑問を感じる。(つづく)

 まず予定地の地質だ。組合自らの生活環境影響調査では、その地質が「脆弱」で「山地災害を起こしやすい地形」だとされているにもかかわらず、組合は詳しい地質調査もせずに「安全だ」と一点張りだ。地質の第一人者である信州大学の小坂共栄教授と共に有志で行った調査では、数多くの断層が見つかり、活断層である可能性も高いことが分かった。大地震が起きた場合、灰溶融施設は周囲地域に大きな被害を起こしかねない。候補地の選定からして住民の安全を無視した、極めて無責任な計画だと言わざるを得ない。
 さらに心配なのはダイオキシンや重金属などの有害物質による環境汚染だ。組合は施設の排ガスについて「国よりも大変厳しい自主基準を設定した」としながらも、排出される危険性が大である重金属類や、ダイオキシンよりも毒性が強いダイオキシン類似物質は基準に含めていない。肝心のダイオキシン測定法に関しても、年一回、わずか四時間という国の極めて不十分な測定法に従うという。はるかに信頼性の高い測定技術がドイツやベルギーで義務化され、日本にもすでに導入例があるが、採用意向を聞いたところ、祖合はその存在すら知らなかった。
 灰溶融施設の「成果物」であるスラクも、道路工事の路盤材や埋め戻し材などに使い、「リサイクル時代」に貢献するというが、アスベストの二の舞いになりかねない危険性がある。なぜならスラクは鉛やヒ素など、多くの有毒な重金属を含んでおり、それが現在も日本に降り注ぐ酸性雨によって溶出することは公共機関の試験で証明済みだ。スラクによる土壌汚染、地下水汚染は地域住民の健康をむしばみ、財産である土地をも台無しにする可能性がある。しかし、ここでも組合は国の基準を盾に公共工事でのスラク利用をもくろんでいる。
 「それでも必要だ」と言う声を聞くが、四年間でわずか亘二十六日間しか稼働していない山梨県大月市の灰溶融炉に似た例が全国にたくさんあり、灰の減量効果もあまり期待できない。事故や故障も頻繁に起こり、財政面でも多くの問題を有している。
 今、最も必要なのは製造者責任制度の導入によるごみの発生抑制と、生ごみ分別・堆肥(たいひ)化など、ごみを「資源」とする徹底した有効利用の確立だ。これが次世代への私たちの義務である。灰溶融炉はその義務を果たすのではなく、多くの危険と無駄をも含めた、時代に逆行する施設だ。組合が「何か何でも休戸に作るんだ」という強行な姿勢を改め、私たちの子どもや子孫のための本質的な解決策に取り組むなら、住民は協力を惜しまないだろう。

やはり疑問に思っている住民が多い:共産党アンケート結果 (shiryo)


長野日報2006/11/6の記事

11月6日の長野日報に出た記事によると、共産党富士見町委員会が11月に行ったアンケートに対して282通の回答があって、灰溶融施設建設に関しては、実に74.1%(166人)が延期または中止を求めた。この結果を踏まえ、どう委員会は富士見町の矢嶋町長に「環境、安全、コストの問題が山積みしている」として、溶融施設に頼らない解決策の検討を要望したそうだ。矢嶋町長が、組合の副組合長ではなく、町民の健康と財産を守る事が責務である町長と言う立場に立ってこの結果を受け止める事を期待したいが。。。

2006/12/07

公害防止協定:梶山弁護士が警鐘を鳴らす (kaisetsu)

11月18日、富士見町で行った講演会の最後に、ゴミ弁連会長の梶山正三弁護士は公害防止協定を容易に結ぶ事の危険性について話してくれた。貴重な助言がたくさんありましたので、この部分を文字起しして、そのまま載せます。協定締結を望んでいる皆さんにぜひ読んでいただきたいです。
特に最後の締めくくりの「実効性があるだけの案を持っていくと、相手が嫌がります。相手が嫌がるくらいものもではないと意味がない」と言うコメントを心していただきたいと思います。
なお、富士見町のエンジェル千代子議員もこの部分について書いています。また講演の質疑応答の時間にも公害防止協定について質問があって、先生の回答を含め、ここに載せています。あわせて読んでください。

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 協定の話を少ししたいと思います。
 まず一つ感じるのは、この今の溶融炉計画にしても、それから、コンサルが持ってくる計画にしても、そもそも発端は97年5月の国の広域化計画なんですね。私はこの国というのは完全中央集計的な国だと思いますが、その中央集計的なごみ行政に踊らされてプラントメーカーのために自治体が大変な無駄遣いをずっと積み重ねてきたっていうのか今までの経緯なんです。そうすると、そういう意味で言うと役にも立たない施設を、あるいは危険性の大きい施設を作らされてそのために住民が税金という形でその多額の負担を背負うと、まずそれがそもそもおかしいと言う問題意識が必要ではないかと。(つづく)

 そもそも憲法は、まあ実はこれは私お話したいことがいっぱいあるんですが、時間の都合で省略します。一般的な話だけお話しますが、まずそれは自分たちの手でやはり、自分たちでごみ処理計画をもう一度見直して、将来こういう形で自分の地域のごみ処理をこうやっていく、という計画を本当は市民の手で作らなきゃいけない。そういうことが大事だと思います。
 それから公害防止協定という話があって、公害防止協定とすれば、これはやってもしようがないんじゃないかと、あるいはやってもいいんじゃないかという声があるという風に伺っております。公害防止協定については私、あっちこっちでいろんな経験をしていますが、大変危険なものであると。なぜ危険かというのをこれからお話したいと思います。まあ実効性のある協定ができるのかどうかということですね。そのために、私は協定を結んでやれるとは決して考えません。
 協定は今回の場合、逃げ道。むしろ作らないほうがいい。当分作らないのがベスト。残された時間がどのくらいあるのか。その前に地域の皆さんでごみ処理計画をみなさんで見直して、ある程度長期的なビジョンなり計画的を作る時間があるのか。で、そのために当面の計画を一時停止させるという事が可能なのかどうか、というのが正に地域のみなさん方の課題だろうと思います。これは3セク、いわゆる第三セクターが事業団方式で各地で処分場を作っていますが、そのときに決まりきって言ってくるのがこういうことなんですね。いわゆる3セク、事業者側から出される協定案のごくおおざっぱなスケッチです。事業団、責務としてこういうことを書きますよと。


事業者側が良く提示する協定案の大雑把なスケッチ

モデル的なものを整備しますよと。まあ、これは口だけですね。
 それから県の責務、事業団の指導監督及び施設に対する連帯責任取りますよと。まあこれも、こういうこというわけですね。
 それから生活環境等の保全。市、事業団の役割をきちっと規定します。
 それから施設の運営管理、施設運営管理検討委員会を作ります。地域住民の代表、関係自治体、事業団等を入れます。まあこれは、いかにもいい制度に見えますけれど現実はぜんぜん違います。
 それから事故発生時の措置。即時停止します。調査、応急措置をとります。報告します。住民に周知させます。
 報告。水質、大気等の検査結果を報告します。
 それから立ち入り調査。市・市が認めるものによる立ち入り調査をします。
 それから損害賠償。事業団は、将来にわたって損害を賠償し県はこれを保証します。
 そして協議・改訂。協議事項への疑義、改正の必要が生じたときの措置。
 まあ、これだけやってくれりゃあいいんじゃないの?と考える人が結構いると思いますが、これは詳しくお話している時間がないですが、こんな協定を結んでも、大体役に立たないと思ってください。


協定を結ぶに当たって気を付けなければならない主なポイント

 まずこれ、私の経験的なことでお話したいですが、まず市町村だけを協定当事者としないということですね。これはたいへんよく見るタイプなんですが、例えば今回の場合は一部事務組合が事業者で、その組合とどこが協定を結んだかということがひとつのポイントですね。よくあるのは、その地元の自治体だけが協定当事者となる。これは民間事業者の場合もそうですよ。そうすると、これも大変よくあるトラブルなんですが、協定違反の事実に対して、協定当事者に住民が入っていないと、市町村がその協定違反の事実を突いて、事業者に対して的確な対応をしない限り、住民自身は協定の当事者じゃないので何も物が言えない。これが非常によくあるタイプです。ですから私は、基本的に市町村だけを協定当事者とする協定はやるべきではない、むしろ市町村なんていらないよと。住民と事業者だけでやるのが本則だとお話しています。
 それから信頼できない相手は必ず協定破りをするという前提をしなくちゃいけない。皆さんが今回の一部事務組合を協定破りをする相手かどうかと言う事をよく考える必要がある。私は、東京都日の出町で、26市1町を構成団体とする一部事務組合を相手に12年間裁判をやっています。もう彼らの言うことは嘘だらけです。それで協定破りをしても、協定破りをしていないと常に言い張っています。また、公共だから嘘をつかない、悪いことをしないと思うのは大変な間違いで、ある面では民間事業者よりもたちが悪いと言うものはたくさんあるわけですね。そうすると協定破りをした場合に打つ手があるんだろうか というのが次の問題です。
 それから住民の立ち入り調査権に条件を付けない。つまり住民が立ち入り調査をしようとした時によくあるのは、地元の市町村の担当者と一緒じゃないとダメだよとかね。それから事業者の業務に差支えがないように、前もって必ず言ってからでなきゃ立ち入りさせないよ、と言うのが大変多いわけですが、それだと立ち入り調査としての効力がまったくないですね。ちょっと先ほどのを見ていただきますが、立ち入り調査、市・市が認める者による立ち入り調査。そうすると市と仲良くやってない人、市の方針が気に食わない人に対しては市がいやだよって言うとその人は立ち入りができないと、こういうことになります。
 それから、協定違反事実の認定方法を必ず入れる。これも私、経験的にお話したいんですが、例えば東京都日の出町の協定は、協定の部分だけ見ると大変精密に、かつ細かく出来ています。例えば風速5メートル以上の風が10分以上続いた時には、その日は搬入を停止すると、こう書いてありますね。それで台風が何回来ても、彼らは風速5メートルを超えないと言い張るんですね。超えてないと言い張るんですね。つまりそうするとそこで水掛論になっちゃって、違反しているのかどうかという入り口で躓いてしまう。ですからそういう場合、おれは協定違反していない、いやお前は協定違反していると言う水掛論にならないように、そういう場合には両方の意見が一致すればかまわないのですが、意見が一致しない場合に、認定方法を必ず入れなければならない、あるいはこれを仲裁規定といいますが、認定できる第3者機関を必ず作る。そして第3者機関の認定には必ず従う、という事を入れなければならない。
 それから協定違反判断の基準を「基準値」に求めないこと。これはどういうことかと言うと、先ほどからお話していますが、基準さえ守ってりゃあいいだろうと例えば悪臭の問題がありますね。ところが悪臭って言うのは人間がものすごく臭いと思う物でも、やはり臭気測定あるいは臭気判定するとこれは全部クリアになっちゃうんです。人間のほうがずっと敏感なんです。だから基準値というのはそのぐらいいい加減なんですね。先ほど大気汚染の問題でも言いましたけどほとんどの有害物質について基準値がないんですから、基準値を守っていたって言うだけではやっぱり意味がないので、そう意味で言うと、違反に、協定違反基準値の基準を基準値にしてはいけないと。じゃあどうすればいいのかっていうのは、お話しする時間が、まあご質問があればしたいと思います。
 違反に対する措置に強制力を持たせる。紳士協定というのはでたらめで、協定の作り方が悪いだけです。協定を作った時に違反事実を第三者機関に認定させて、それに対して強制執行認諾という条項を入れる。後で裁判所に持って行っても、紳士協定だとは言わせないことができる。
 それから報告義務、データー開示義務は必須事項。水質・大気等の検査報告では役に立たない。大気と言うのはその日の気象条件によって違う。アメリカ軍の代理人で産廃業者と裁判をやったときの話。アメリカ軍は数十億円をかけて2ヶ月間、毎日連続してダイオキシンを測った。60日間で、一番高いときと一番低いときで、600倍の変動があった。大気はそのときの気象条件、風向き、煙の上がり方で常に変動する。月に一度測ってそのときよかったでは話にならない。単純に測った結果を報告させても意味がない。
 それから業務日誌を備えおいていつ誰でも見れるようにする。これも絶対に必要だ。
 それから定期協議、随時協議の規定を入れる。業者と少なくとも二週間に一度、顔をつき合わせて管理運営の方法、住民の被害を少なくても2時間ぐらいは話し合いの機会を設ける。随時協議とは必要に応じてどちらかが求めた場合、もう一方は必ずそれに応じなければならない。
 それから協定締結の前に必ず専門家のチェックを入れる。協定を作って後で泣くのは、協定に実効性、実際に効力がないもんで、法律家に見てもらっていないからだ。その気で作れば実効性のある協定は出来ます。実効性があるだけの案を持っていくと、相手が嫌がります。相手が嫌がるくらいものもではないと意味がない。

灰溶融炉は要らない!富士見町・原村・茅野市の住民運動について (kaisetsu)

環境会議諏訪の「月間環境会議通信」にこの間、灰溶融炉を考える会の呼びかけ人の一人である原村の小林峰一さんが書いた記事が載っていた。大分時間が経ちましたが、こちらでも、私たちの声を代表する意見として載せたいと思います。

灰溶融炉は要らない!富士見町・原村・茅野市の住民運動について   小林峰一

 「住民運動は民主主義の学校のようなもの。理念を掲げ、話し合いを繰り返してコンセンサスをつくる。腐った行政が一番怖がっていること。そして、良心的な行政マンが心待ちにしていること。議会が変わり、人々が自信を持ったとき、地方自治が変わると信じている。地方が変わることが、ごみマフィアや官僚にとっては一番怖い。だから、彼らはNPO法人登録制度をつくり、広域連合や道州制をつくろうとしているのだと思う。民主主義の芽を摘む、それが権力者の性(さが)かもしれない。」
 これは、私たちがお世話になっている関口鉄夫さんから教わった言葉です。富士見町・原村・茅野市の有志による灰溶融炉を作らせないための住民運動は、もうじき1年を迎えます。現地に足を運び自分の目で確かめることや地域の住民と直接会って話しをすることは、運動にとって大切なことだと思います。
 私たちは、最近、地質と水に関する調査を行いました。9月30日と10月8日の2日に渡り建設予定地周辺の地質について信大副学長、小坂共栄教授(地質構造学)の全面的なご協力を得て踏査を行いました。また、10月15日には、住民有志により休戸と花場の集落内で聞き取り調査を行い建設予定地の近くにある水源を見てきました。

小坂共栄教授との1回目の地質調査、程久保川にて


2回目の地質調査後、結果を説明する小坂先生

 地質に関する調査では、建設予定地の横を流れる程久保川と少しはなれた武智川に沿って調査を行い、加えて釜無川沿いの道路に面した露頭についても調べました。河床や護岸部分に露出した地層から、地層の向きや傾斜、地質の状況などを知ることができました。一帯は火砕流と土石流による堆積物が重なったような地質であり、その中に断層が何本も走っていることが確認できました。さらに、この断層は、糸魚川―静岡構造線(活断層)と同じ方向であることから活断層の可能性が高く、建設予定地は、このような断層帯の上に位置していることがわかりました。このような場所を唯一の候補地としている灰溶融炉の計画は、住民の安全を無視した計画であると言わざるを得ません。
 水に関する調査では、富士見町内の約3分の1に給水されている第1水源を見ました。この水源は、白谷川と程久保川から取水しており、予定地から1.6㎞しか離れていないため施設が稼動した場合には、施設から大気中に排出されるダイオキシンや重金属の影響を受ける可能性があります。また、花場地区と休戸地区に給水している花場水源(湧水)は予定地から650mしか離れておらずさらに深刻です。聞き取り調査の際に花場集落の人が、花場ではガンで亡くなる人がとても多いと言っていたことが気になります。建設予定地では、以前焼却施設が稼動しており、今後、健康調査などを行い確かめる必要がありそうです。

白谷程久保遂導

富士見町の水源を探る
 灰溶融炉は、焼却灰の減量化を目的として計画されました。しかし、メーカーから示されている設計書を見ても減量効果が殆どないことが明らかです。溶かした灰を冷却して作るスラグは、路盤材や埋め戻し材としてリサイクルする計画ですが、酸性雨などにさらされた場合、スラグからは、鉛や砒素など有害な重金属類が溶け出すこともわかっています。建設費23億円、年間の運営費3億円を掛けて行うこの計画は、健康被害や税負担の面で住民を苦しめるだけで全く意味のない事業です。私たちはこのような計画を容認するわけには行きません。最近、地元の方たちが運動に参加し始めました。チラシを配りながら話しをすると、多くの人がこの施設は要らないと答えます。地域の自然は私たちだけのものではありません。ご先祖様から一時的に預かっているだけです。子や孫の世代に安心して暮らせる環境を残すことは、現代を生きる私たちの責任ではないでしょうか。この機会に、身近な問題として考えていただければ幸いです。