2006/12/30

灰溶融炉問題で思うこと:一人の富士見町の町民の声 (kaisetsu)

富士見町に住むカラマツさん(HN)が灰溶融炉問題について書いた文章を紹介したいと思います。カラマツさんは、研究者としての10年間を含め、民間の大手企業で生産技術に長年携わった方です。技術の専門家であるだけに、カラマツさんの言葉には無視できない説得力があると思います。組合の方も、真剣に住民の安全を考えているなら、ぜひ一読して噛み締めていただきたいです。

*************************************

 「灰溶融炉」 そんな聞き慣れない名を知ったのは、1年ほど前、住民達が作成した1枚のチラシでした。その導入は私の住む八ヶ岳山麓の3市町村(茅野市、富士見町、原村)において、多くの住民に知らされないまま、4年ほど前から検討されていました。導入地の生活環境影響調査に4,200万円ほどの調査費を使い、非公開の委員会によって導入機種を決める入札寸前の状況でした。その情報を知った住民達が、具体化している計画の存在を町民に知らせるチラシだったのです。その後住民達が、1回目説明会の質疑応答の録音テープから起こした、58ページに及ぶ資料を読んで、これは無関心ではいけないと感じました。
 早速インターネットで検索して調べてみました。それによると、焼却した灰や埋立地から掘り起こした灰を、1,200℃以上の高温で燃やし、出来た溶融スラグを埋め戻しや路盤材等として再利用する、高温焼却炉でした。鉄鋼メーカーが開発して以来あまり導入されていなかったのですが、1997年、国のゴミ広域処理化通達で補助金が出るようになったことから、埋め立て処分場の延命に困っていた多くの自治体が飛びついた経緯があるようです。しかし検索を進めていくと、幾つもの問題を抱える設備ということがわかりました。

 導入自治体から公開された情報では、頻繁に起きるトラブル、焼却炉に比べて3倍近い処理コスト、用途の見つからない溶融スラグ等の事例が紹介されていました。そして肝心の焼却灰の減量効果は、処理に先立つ溶融不適物の除去、溶融スラグの他に発生する溶融飛灰、溶融メタル等によって、十数%程度しか期待出来ないとわかりました。疑問や不安を感じた住民達が、灰溶融炉問題に詳しい大学講師や弁護士を招いて開いた勉強会に参加してみました。驚いたことは、安全、安心に対する国の規制や基準が不十分のまま実用化されているという事実でした。たとえば有毒物質のダイオキシンについては、常時発生しているにもかかわらず、 「年1回、燃焼が安定した1時間以上経過後、連続4時間以上計測した濃度が基準値以下」 という排出基準になっています。またダイオキシン以上に毒性が強く、より高濃度で排出されているダイオキシン類似性毒性物質や、フィルターでは除去出来ない鉛、水銀、カドミウム等の有害重金属ガスについては、排出基準が全くないということでした。

 以後3回の灰溶融炉説明会に参加していますが、住民側の意見とは平行線のままで一向に溝が埋まりません。一番問題な安全性について、自費で専門家を招き勉強している住民側に対して、行政側は国の基準に沿って進めていると云うだけです。かってJIS規格を決める委員会に使用者側委員として参加した経験では、そこで決まるJIS規格などというものは、多くのメーカーがパス出来る低い基準値でした。使用者はJIS規格などあっても、自社に導入する際は独自の厳しい評価試験を実施して、いちばんコストや品質が良くて安心安全なものを選びます。水俣病や薬害エイズ裁判でも明らかなように、国の云うことは絶対に安心、安全ではありませんでした。
 
 ゴミ問題は 「循環型社会」 実現のためだけではなく、歳出削減への効果もあります。住民1人1日当たり家庭系(可燃+不燃)ゴミ量は、最近のデータによれば、鎌倉市412g、東京日野市465g、横浜市483g、2020年迄にゴミゼロを宣言した徳島県上勝町では何と106gでした。それに比べここ3市町村は649g、まだまだ減らせる余地があります。
 町に灰溶融炉が導入されれば、償却費用も含めると3市町村合計で年間5億円ほどの費用がかかります。富士見町は既に233億円ほどの借金を抱えていますが、導入によって町の借金は減るどころか確実に増えていくことになります。最近のニュースで、今後5年間で61億円の財政赤字を公開した「熱海市財政危機宣言」を知りました。また財政破綻した夕張市で、血相変えた住民達が責任を追及していたニュースを見ましたが、熱海市が早めに住民の危機意識と自覚を促したのは、賢明だと思いました。

 この地で、このような反対運動が起きるとは思いもよりませんでした。その多くは、この地が気に入って他所から移り住んだ人達です。お金を出し合って先生を呼んだり、街頭でのビラ配りや各戸への配付、地道な説明活動や建設反対の立て看板設置など、何とかしたいという思いは純粋そのものです。また、説明会で聞いた、建設予定地域に長く暮している地元住民の発言も忘れられません。国の基準で作られ国の政策で2006年2月に撤去された、焼却炉が稼動していた間、雨水貯水槽にボウフラは一匹も発生しなかったと。灰溶融炉は、焼却炉よりもはるかに危険と考えられるものです。

 ある政党の住民アンケートでは、延期または中止を求める意見は約75%と多数でしたが、回収は10%に満たない数でした。そんな折り行政側は、関連4地域の区長に突然、公害防止協定の調印を申し入れて来ました。

 十分な安全の確認や保障がなされないまま、補助金を交付する国に怒りを覚えますが、行政は、それを知った時点で止めるのが正しい判断だと考えます。国やメーカーの言い分とデータを信用するのみで、行政自らが安全、安心を検証して住民に説明したことはありませんでした。町にも住民にとっても、何の利点もない灰溶融炉設備などを導入することなく、先ずは何よりも、総ての住民が行政と一丸なって、ゴミの削減を実施すべきではないかと思っています。

(2006年12月)

2 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

あけましておめでとうございます。

カラマツさんの文章、
この問題の核心をわかりやすく整理されていて
とてもよく理解できました。

組合側は、きちんと細かい点について
回答をして欲しいと思います。
細かいことの積み重ねが
住民との信頼関係には一番大切なのに。

「住民の安全に対する配慮はやはりゼロ:3回目の公開質問状の回答」
の詳細が読めなくなっています。
確認をよろしくお願いします。

Jeremy   さんのコメント...

「住民の安全に対する配慮はやはりゼロ:3回目の公開質問状の回答」のお知らせをありがとう。直しました。