11月18日、富士見町で行った講演会の最後に、ゴミ弁連会長の梶山正三弁護士は公害防止協定を容易に結ぶ事の危険性について話してくれた。貴重な助言がたくさんありましたので、この部分を文字起しして、そのまま載せます。協定締結を望んでいる皆さんにぜひ読んでいただきたいです。
特に最後の締めくくりの「実効性があるだけの案を持っていくと、相手が嫌がります。相手が嫌がるくらいものもではないと意味がない」と言うコメントを心していただきたいと思います。
なお、富士見町のエンジェル千代子議員もこの部分について書いています。また講演の質疑応答の時間にも公害防止協定について質問があって、先生の回答を含め、ここに載せています。あわせて読んでください。
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協定の話を少ししたいと思います。
まず一つ感じるのは、この今の溶融炉計画にしても、それから、コンサルが持ってくる計画にしても、そもそも発端は97年5月の国の広域化計画なんですね。私はこの国というのは完全中央集計的な国だと思いますが、その中央集計的なごみ行政に踊らされてプラントメーカーのために自治体が大変な無駄遣いをずっと積み重ねてきたっていうのか今までの経緯なんです。そうすると、そういう意味で言うと役にも立たない施設を、あるいは危険性の大きい施設を作らされてそのために住民が税金という形でその多額の負担を背負うと、まずそれがそもそもおかしいと言う問題意識が必要ではないかと。(つづく)
そもそも憲法は、まあ実はこれは私お話したいことがいっぱいあるんですが、時間の都合で省略します。一般的な話だけお話しますが、まずそれは自分たちの手でやはり、自分たちでごみ処理計画をもう一度見直して、将来こういう形で自分の地域のごみ処理をこうやっていく、という計画を本当は市民の手で作らなきゃいけない。そういうことが大事だと思います。
それから公害防止協定という話があって、公害防止協定とすれば、これはやってもしようがないんじゃないかと、あるいはやってもいいんじゃないかという声があるという風に伺っております。公害防止協定については私、あっちこっちでいろんな経験をしていますが、大変危険なものであると。なぜ危険かというのをこれからお話したいと思います。まあ実効性のある協定ができるのかどうかということですね。そのために、私は協定を結んでやれるとは決して考えません。
協定は今回の場合、逃げ道。むしろ作らないほうがいい。当分作らないのがベスト。残された時間がどのくらいあるのか。その前に地域の皆さんでごみ処理計画をみなさんで見直して、ある程度長期的なビジョンなり計画的を作る時間があるのか。で、そのために当面の計画を一時停止させるという事が可能なのかどうか、というのが正に地域のみなさん方の課題だろうと思います。これは3セク、いわゆる第三セクターが事業団方式で各地で処分場を作っていますが、そのときに決まりきって言ってくるのがこういうことなんですね。いわゆる3セク、事業者側から出される協定案のごくおおざっぱなスケッチです。事業団、責務としてこういうことを書きますよと。
事業者側が良く提示する協定案の大雑把なスケッチ
モデル的なものを整備しますよと。まあ、これは口だけですね。
それから県の責務、事業団の指導監督及び施設に対する連帯責任取りますよと。まあこれも、こういうこというわけですね。
それから生活環境等の保全。市、事業団の役割をきちっと規定します。
それから施設の運営管理、施設運営管理検討委員会を作ります。地域住民の代表、関係自治体、事業団等を入れます。まあこれは、いかにもいい制度に見えますけれど現実はぜんぜん違います。
それから事故発生時の措置。即時停止します。調査、応急措置をとります。報告します。住民に周知させます。
報告。水質、大気等の検査結果を報告します。
それから立ち入り調査。市・市が認めるものによる立ち入り調査をします。
それから損害賠償。事業団は、将来にわたって損害を賠償し県はこれを保証します。
そして協議・改訂。協議事項への疑義、改正の必要が生じたときの措置。
まあ、これだけやってくれりゃあいいんじゃないの?と考える人が結構いると思いますが、これは詳しくお話している時間がないですが、こんな協定を結んでも、大体役に立たないと思ってください。
協定を結ぶに当たって気を付けなければならない主なポイント
まずこれ、私の経験的なことでお話したいですが、まず市町村だけを協定当事者としないということですね。これはたいへんよく見るタイプなんですが、例えば今回の場合は一部事務組合が事業者で、その組合とどこが協定を結んだかということがひとつのポイントですね。よくあるのは、その地元の自治体だけが協定当事者となる。これは民間事業者の場合もそうですよ。そうすると、これも大変よくあるトラブルなんですが、協定違反の事実に対して、協定当事者に住民が入っていないと、市町村がその協定違反の事実を突いて、事業者に対して的確な対応をしない限り、住民自身は協定の当事者じゃないので何も物が言えない。これが非常によくあるタイプです。ですから私は、基本的に市町村だけを協定当事者とする協定はやるべきではない、むしろ市町村なんていらないよと。住民と事業者だけでやるのが本則だとお話しています。
それから信頼できない相手は必ず協定破りをするという前提をしなくちゃいけない。皆さんが今回の一部事務組合を協定破りをする相手かどうかと言う事をよく考える必要がある。私は、東京都日の出町で、26市1町を構成団体とする一部事務組合を相手に12年間裁判をやっています。もう彼らの言うことは嘘だらけです。それで協定破りをしても、協定破りをしていないと常に言い張っています。また、公共だから嘘をつかない、悪いことをしないと思うのは大変な間違いで、ある面では民間事業者よりもたちが悪いと言うものはたくさんあるわけですね。そうすると協定破りをした場合に打つ手があるんだろうか というのが次の問題です。
それから住民の立ち入り調査権に条件を付けない。つまり住民が立ち入り調査をしようとした時によくあるのは、地元の市町村の担当者と一緒じゃないとダメだよとかね。それから事業者の業務に差支えがないように、前もって必ず言ってからでなきゃ立ち入りさせないよ、と言うのが大変多いわけですが、それだと立ち入り調査としての効力がまったくないですね。ちょっと先ほどのを見ていただきますが、立ち入り調査、市・市が認める者による立ち入り調査。そうすると市と仲良くやってない人、市の方針が気に食わない人に対しては市がいやだよって言うとその人は立ち入りができないと、こういうことになります。
それから、協定違反事実の認定方法を必ず入れる。これも私、経験的にお話したいんですが、例えば東京都日の出町の協定は、協定の部分だけ見ると大変精密に、かつ細かく出来ています。例えば風速5メートル以上の風が10分以上続いた時には、その日は搬入を停止すると、こう書いてありますね。それで台風が何回来ても、彼らは風速5メートルを超えないと言い張るんですね。超えてないと言い張るんですね。つまりそうするとそこで水掛論になっちゃって、違反しているのかどうかという入り口で躓いてしまう。ですからそういう場合、おれは協定違反していない、いやお前は協定違反していると言う水掛論にならないように、そういう場合には両方の意見が一致すればかまわないのですが、意見が一致しない場合に、認定方法を必ず入れなければならない、あるいはこれを仲裁規定といいますが、認定できる第3者機関を必ず作る。そして第3者機関の認定には必ず従う、という事を入れなければならない。
それから協定違反判断の基準を「基準値」に求めないこと。これはどういうことかと言うと、先ほどからお話していますが、基準さえ守ってりゃあいいだろうと例えば悪臭の問題がありますね。ところが悪臭って言うのは人間がものすごく臭いと思う物でも、やはり臭気測定あるいは臭気判定するとこれは全部クリアになっちゃうんです。人間のほうがずっと敏感なんです。だから基準値というのはそのぐらいいい加減なんですね。先ほど大気汚染の問題でも言いましたけどほとんどの有害物質について基準値がないんですから、基準値を守っていたって言うだけではやっぱり意味がないので、そう意味で言うと、違反に、協定違反基準値の基準を基準値にしてはいけないと。じゃあどうすればいいのかっていうのは、お話しする時間が、まあご質問があればしたいと思います。
違反に対する措置に強制力を持たせる。紳士協定というのはでたらめで、協定の作り方が悪いだけです。協定を作った時に違反事実を第三者機関に認定させて、それに対して強制執行認諾という条項を入れる。後で裁判所に持って行っても、紳士協定だとは言わせないことができる。
それから報告義務、データー開示義務は必須事項。水質・大気等の検査報告では役に立たない。大気と言うのはその日の気象条件によって違う。アメリカ軍の代理人で産廃業者と裁判をやったときの話。アメリカ軍は数十億円をかけて2ヶ月間、毎日連続してダイオキシンを測った。60日間で、一番高いときと一番低いときで、600倍の変動があった。大気はそのときの気象条件、風向き、煙の上がり方で常に変動する。月に一度測ってそのときよかったでは話にならない。単純に測った結果を報告させても意味がない。
それから業務日誌を備えおいていつ誰でも見れるようにする。これも絶対に必要だ。
それから定期協議、随時協議の規定を入れる。業者と少なくとも二週間に一度、顔をつき合わせて管理運営の方法、住民の被害を少なくても2時間ぐらいは話し合いの機会を設ける。随時協議とは必要に応じてどちらかが求めた場合、もう一方は必ずそれに応じなければならない。
それから協定締結の前に必ず専門家のチェックを入れる。協定を作って後で泣くのは、協定に実効性、実際に効力がないもんで、法律家に見てもらっていないからだ。その気で作れば実効性のある協定は出来ます。実効性があるだけの案を持っていくと、相手が嫌がります。相手が嫌がるくらいものもではないと意味がない。
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